【主張】国が「責任」を果たすとき
連合の2021年春季賃上げ要求によると、2%の定期昇給分とベース・アップによる底上げ分2%を合わせ、4%の引上げをめざすとしている。しかし、新型コロナウイルス感染症の広がりのなかで行われる賃上げ交渉に多くを期待できない。本紙予想では、最終的に賃上げ率1.8%程度を下回る可能性がある。コロナ禍による経済の危機的な落ち込みを元の軌道に戻すため、民間企業の賃上げ交渉に頼らず、まずは国がその責任を果たすべきである。
21年賃上げ交渉は、100年に1度のパンデミック下で実施される。例年の賃上げ交渉と同じ流れで考えることはできない。本紙で賃金問題の解説をお願いしているプライムコンサルタントの菊谷寛之代表と賃金システム研究所の赤津雅彦代表の予想(1月11日号1面参照)では、前年の2.0%(厚生労働省調べ)を、さらに0.2~0.3ポイント程度下回る可能性がある。平成25年以前のデフレスパイラルに悩まされていた時期の賃上げ率水準に逆戻りである。
連合は、パンデミックのなかで、前年と同じ賃上げ要求基準を打ち出した(12月7日5面参照)。業種、業態によって、ダメージの度合いが大きく異なっている点を考慮すれば、全体として積極姿勢を維持したことは評価できる。労働組合としては、経済状態の落ち込みを自ら配慮し過ぎて、内需喚起に不可欠な賃上げ要求基準を安易に引き下げてはならない。
ただ、コロナ禍の真っただ中にある21年は別である。事実上、定昇分の確保が精一杯と考えれば、内需喚起、経済成長に果たす役割は極めて小さい。コロナ禍以前の経済水準に戻す力にはならないだろう。今年の民間企業の賃上げに、多くを期待できないのは致し方ない。
民間部門が稀にみる厳しい状態にあるとすれば、頼れるのはただ一つ、国だけである。低賃上げをカバーする民間支援が絶対的に求められる。今年に限っていえば、内需喚起を図り、経済成長を促すには、民間の賃上げではなく、必要なだけの十分な経済対策が不可欠である。多くの国民の命に直結していることを肝に銘じてもらいたい。