【主張】「非正規」呼称一掃めざせ
経団連は、このほどまとめた経営労働政策特別委員会報告で、「非正規労働者」の呼称を改めるべきであると提言している。長年にわたってネガティブな印象が染みついてしまった非正規に代わる呼称を新たに考え出す必要があるという。
正規に対する非正規と大括りにするのではなく、非正規もその一人ひとりが様ざまな個性を有する労働者であることを忘れてはならない。今後は、就労の実態や役割などに合った適切な呼称で呼び合うように改めていくべきである。たかが呼称の話ではない。置き去りにされてきた若い労働者たちの尊厳の回復にかかわる問題と捉えたい。
日本で非正規労働者という呼称が広く普及したのは、1980年代からとされている。当初は、フリーターなどと呼ばれ、労働時間や雇用期間に捉われない柔軟で自由な働き方として注目を浴びた。
しかし、90年代からのバブル経済崩壊により、比較的解雇が容易な労働者群としてその規模が急拡大し、いまや雇用労働者の4割となってしまった。
日本の経済社会にとっては、由々しき事態である。処遇水準が低く意欲に欠けた非正規労働者を、このままの形で将来へ引き渡していくようなことになれば、社会を支えきれなくなる可能性がある。
非正規に代わる呼称を生み出すことによって、社会や企業における役割を自他ともに自覚し、意欲を持って働くための環境整備の一環とすべきではないだろうか。
経労委報告では、雇用契約が有期か無期かで区別する「有期契約労働者」、また定年後の高齢社員は「定年後継続雇用労働者」などとする例を挙げている。決して難しいことではない。要は、正規ではない非正規というネガティブな印象を刷新できればいい。
安倍総理も、昨年9月の働き方改革に関するイベントで、「世の中から『非正規』という言葉を一掃していく」と宣言しており、今後の具体的対応に期待したいところ。
4年目となる「官製春闘」の行方が注目されるが、非正規労働者のあり方にも労使の知恵を絞ってほしい。