【ひのみやぐら】職場をつなぐ保健師に期待
産業医の重要な業務として「産業医面談」がある。健康診断で異常所見があったとき、ストレスチェックで高ストレスと判定されたとき、長時間労働を行ったとき、などが面談の対象となるが、産業医面談は事業主にとって受けさせるのは義務である一方、拒否する従業員が少なくない。忙しくて面談を受ける時間がない、面談を受けることによって人事評価に影響があるのではないかと考える、面談内容が上司に筒抜けになるのではないかという不安、などが理由で面談をしないという。
もちろん、人事評価に影響することはなく、就業上の措置など必要な情報に限り、本人の同意なしに会社側に面談内容を知られることはないが、本人にとってみれば素直に信頼していいのか、不安になるのも無理はない。さらに〝先天的〟に医師や病院が苦手という人もいるだろう。産業医に会うということだけでも、二の足を踏む人がいるのは確かといえる。
こうした人にとって、産業医や主治医の橋渡しとして期待されるのが保健師だ。何よりも会社の事情を知っており、気安く、従業員から親しまれている人をよくみかける。健康相談だけではなく、個人的な悩みごとも気軽に相談でき、職場の「オアシス」として機能している会社も少なくないのではないか。従業員と産業医をつなぐコーディネーターとして絶好の存在だ。
今号、特集Ⅱで紹介しているインテージホールディングスでは、入社1年未満の従業員のメンタルヘルス支援へチェックシートによる心身状態のモニタリングをしているが、保健師との関係性をつくるきっかけとしての狙いもあるという。従業員と保健師の関係が近くなることで、相談しやすい体制を構築し、不調の予防につなげたい考えだ。
なお、本誌好評連載中の「本当に役立つ!こころの耳」では、部下の管理につまずいて、うつ状態になり休職した50歳男性の事例を紹介している。社内保健師との面談が奏功して、職場復帰を果たした(2020年2月1日号掲載)。
身近で敷居が高くない保健師は、産業保健の〝ハブ〟として、その役割は大きいといえよう。