【主張】信頼失った労使調整機能
厚生労働省は、現行の時間外・休日労働協定(36協定)の欠陥を指摘した検討会の「論点整理」を明らかにした(本紙2月13日号1面既報)。
学識経験者ら10人で構成する検討会の一致した見解として、36協定の締結を通じた労働時間の調整機能が十分に発揮されていないとの見方を表明している。
過労死が社会問題化して30年ほどが経過した現在においても、なお長時間労働が是正できない状況をみると、労使による労働時間調整システムの限界が明確になった。今後は、一定期間内の時間外労働に強制的・画一的な上限を設定し、違反企業へは何らかの重いペナルティーを負わせる仕組みへの移行が必要となろう。大手、中小に限らず長時間労働を慢性化してしまった代償というほかない。
検討会によると、とくに36協定に特別条項がある場合、時間外労働の歯止めとしての機能が果たされていないとした。このため、上限規制を新設し、違反企業に対する公表制度の充実を図るべきであるなどと提言した。
36協定は、本来、国が定める限度基準の下において、それぞれの企業の実情を勘案した時間外労働時間数を労使協議によって調整するものである。しかし、限度基準が45時間に抑えられている1カ月の特別延長時間をみると、70時間超としている事業場が大企業で34%、80時間超も同15%に達する。特別条項による時間外労働に上限規制がないことによる弊害である。
もちろん、特別条項の利用は、臨時的・突発的な理由に制限され、しかも年間最大6カ月までとなっているが、抜け穴だらけである。条件に沿った運用がなされているか定かではない。労使による調整機能を期待しても、企業側が圧倒的有利な立場にあると適正に働かないことが判明してしまった。
経団連の榊原会長も業務の繁閑などに考慮したうえで、時間外労働の上限規制の強化に賛同しており、法改正へ条件が整っている。あとは、具体的な時間外上限を何時間に決めるかだが、与野党で意見が激しく対立するのは必至といえそうだ。