「5方良し」をめざして/ブレイスFP社会保険労務士事務所 北村 博昭
人事労務分野において、ES(従業員満足)、多様性、エンゲージメントなどのフレーズを見聞きする機会が増えた。人手不足のなかで社員の自主性や、やりがい、帰属意識向上の重要性が再認識されているのだろう。大いに歓迎したい。
ただ、それらが生産性や利益の向上の手段やテクニックとして語られることには違和感がある。私はむしろ、目的そのものではないかと思う。
人を大切にする経営学会会長坂本光司氏の論を紹介したい。
坂本氏は「経営の目的は、会社にかかわるすべての人の幸福に貢献すること」、「黒字安定経営は、その目的達成をめざした実践の結果」だという。そして、「人を大切にする経営を実践する企業は結果として長期に黒字を出し続けている」と実証的に説く。
坂本氏は、5人の幸福を追求する「5方良し」経営を長く提唱されている。5人とは、優先すべき順に、①社員とその家族、②仕入れ先や協力企業などで働く社外社員とその家族、③現在と未来の顧客、④地域住民、とりわけ障害者や高齢者などの社会的弱者、⑤出資者など――を指すという。
坂本氏が著書や講演などで好事例として紹介する企業は、例外なく感動の涙を誘う気高さあふれる実践をしている。私自身が取材した社長さんたちも「テクニックでなく、社員を大切にする思いが人を動かす」と口々に語り、ES自体が経営の目標であり、「5方良し」の出発点と捉えている。
「今だけ、金だけ、自分だけ」の悪魔の誘惑を断ち、愚直に王道を歩むことが、長期安定経営の肝心要といえる。
社会保険労務士業も然り。
弊所では「労使トラブルの予防と人を大切にする経営の普及」をテーマに掲げる。人を大切にする経営、ES重視の労務管理、労使トラブルの事例と予防法などの情報発信を重視している。
就業規則などの社内ルールの整備・作成を受任した際には、社長の認識や社内実情を踏まえつつ、「5方良し」を意識した経営理念や行動指針の作成を支援し、従業員の納得感と働く意欲の高揚に資するべく心掛けている。
また、小規模事業者でも助成金や各種給付金などを自力で申請できるような実務支援、違法な解雇やパワハラなどに直面する労働者の支援窓口の役目なども、社会保険労務士の社会的責務と心得て微力を尽くしている。
今後も、関係者全員の幸福をめざして、同じ志の経営者や同業者に学び、自らの実践を深めつつ、「5方良し」経営の普及に努めたい。
ブレイスFP社会保険労務士事務所 北村 博昭【東京】
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