女性も働きやすい職場へ/かもめ社労士事務所 代表 小林 史栄
先日、就職活動中の女子大学生と会話をする機会があり、彼女の発言の中で、少し驚いたことがあった。
「大学に入るとき、父から、私は女だから、別に進学しなくても良いといわれたんです」。
「えーっと、今って、昭和でしたっけ?」と思わず尋ねてしまった。
彼女は、父の考えは古い、自分は就活も頑張ってバリバリ働きたい、と意欲的に語ってくれた。
思えば、私も若い頃、散々耳にした。「女だからそんなに仕事を頑張らなくても良い」、「どうせ結婚して仕事は辞めるんでしょう」。
子供の頃、鬼ごっこをするときに、ほかの仲間より幼い体の小さい者が「まま子」として加わることがあった。「まま子」は鬼に捕まっても、捕まったとカウントしなくて良い特別な存在なのだ。
私は「女だから」といわれると、この「まま子」ルールを思い出した。まるで、女である自分は「まま子」で、社会活動に参加させていただいている、というように感じた。それは自分の存在や努力を否定されたような、切ない、虚しい気持ちだった。
ところが、私がいかに切なかったか、虚しさを感じたか、熱く語るたびに、苦笑いで静かに遠のく人たちがいる。私が、「女性のケンリ」を振りかざす、面倒くさい人だと思っているのだ。
だから、賢い女性たちは、世の中に迎合した笑顔で、面倒くさい人と思われないようにやり過ごしている。それが、日本の社会で女性がうまく世の中を渡り歩いていく術なのだと学んだ。
さて、現在、多くの職場で人材の多様化が進んでいる。男女の違いだけでなく、国籍、年代、家庭環境など様ざまな属性の違いから、多くの価値観が持ち込まれ、従来の慣習が通用しなくなっているケースも起こっている。
そんな中で、トラブルが起きないよう「お互い理解を深めよう」などといわれるが、価値観の違う人間同士が話し合って理解し合うなど、口でいうほど簡単ではない。
しかし、自分と相手の価値観が違う、ということを認識することはできる。そして互いの気持ちを整理し、チームとしての方向性を共有することはできる。
女性が社会で感じてきた切なさや虚しさを、すべての人が共有したり理解したりすることは難しいだろう。しかし、そのような思いがあった、ということを、今こそ認識すべきではないだろうか。
女性が生き生きと働ける職場ではなく、女性も生き生きと働ける職場づくりを、これからもサポートしたいと思う。
かもめ社労士事務所 代表 小林 史栄【福岡】
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