【主張】本紙創刊70周年の“重み”
本紙「労働新聞」は、令和3年2月7日で創刊70周年を迎えることができた。「日本の経済自立と労働衛生の一考察」と題した創刊号「社説」は、「粉砕された産業施設と枯渇せる資材と窮迫せる資本とを以て産業を復興するには非常な努力を必要とする」と、第二次大戦直後の厳しい現実を直視した言葉で始まっている。昭和26年(1951年)のことである。続けて「生産意欲の向上と労働者の健康が基本条件となるので、今後はこの部門に対する労資双方の理解が最も緊急事であろう」と訴えた。
驚いたことに、2021年の現在においても編集方針の底流にある考え方は変わっていない。労使双方の理解と安定が、日本の社会経済発展のエンジンとなるという認識は創刊から現在に至るまで固く守られており、新たな時代に入っても変わることはない。
国民の財産のすべてが失われた大戦直後、GHQの下で労働基準法が制定された。本紙は創刊号から「労働基準法の解説」を掲載した。同法第3条の均等待遇から始まり第9条の労働者の定義、第20条の解雇予告などの条文を紹介している。
誕生したばかりの同法の内容を知る国民はほとんどなく、条文をありのままに伝えることが重要だった。本紙の最大の使命は、同法の周知と理解の拡大にあったからだ。
壊滅状態から立ち上がり経済大国となった現在の日本においても、本紙の役割は大きく変わることはない。高度に複雑化した法体系情報をエビデンスに基づき偏ることなく読者に伝え続けていることに自信を持っている。いみじくも創刊号「社告」には「我が労働新聞はとかく偏った考えを廃し、あくまで厳正中立を基本理念として未熟ながら社会の発展に寄与し日本の再建に努力するつもりであります」と謳っている。当時の編集スタッフの志が伝わってくる。
本紙は、多くの読者の支持と先輩スタッフらに支えられ70年間の営みを続けることができた。時代が変わっても、そうした志にそぐわぬよう紙面制作に取り組みたい。引き続きご愛顧のほどお願いいたします。