【人材ビジネス交差点】志高い「真の経営力」習得を/人材サービス総合研究所 所長 水川 浩之
人材サービス事業者にとって、改正労働契約法、改正労働者派遣法、同一労働同一賃金推進法、さらに社会保険の適用拡大など、経営的な視点では逆風ばかりだ。
もとより、労働者の保護や悪質事業者の排除につながる法規制はより厳格化されることが求められる。同時に事業の自由度を奪い労働市場の活性化を阻む規制の排除も望まれる。
人材サービスは、その名の通りサービス業である。あらゆる民間のサービス業がそうであるように、事業規制は可能な限り排除し、健全な競争環境を整え、市場原理に任せる方が、受益者が受けるメリットは大きい。
人材サービスの直接的な受益者は、いうまでもなく労働者と企業の双方である。これまでの労働者派遣法の変遷を振り返ると、政争の具として扱われたり、心ないメディアの報道に翻弄されたりと、本質とは異なるところで議論が進むことも多かった。
本来の受益者の利益を損ねる結論に至ったことも少なくない。そろそろ、受益者にとって何が本当に大切かを考えていかなければならない。
働き方改革実現会議で議論されている「同一労働同一賃金」の推進もさることながら、「マージン率の開示」や「日雇派遣の原則禁止」など疑問の多い平成24年改正法、十分な議論が尽くされなかった平成27年改正法の附帯決議の再検討も不可欠だ。
環境の変化が社会にもたらす影響も計り知れない。特に、AIやロボット、IoTなど、第4次産業革命への本格的な突入は、現在の雇用の常識を大きく変える可能性が高い。その変化は人類がかつて経験したことがないほどの速さでやってくる。
これまで安泰とされてきた職種が瞬く間に凌駕されることも十分に予想される。一方では新たに必要とされる仕事も生まれる。
人材サービス事業者には、顕在化した企業の人材ニーズに対応するだけでなく、潜在的な雇用の機会を新たに創出することが役割として求められる。労働者のキャリア形成支援も含め、新たな仕事に適合する人材開発をすることも必須だ。人材サービス事業者自身の経営も変わらなければ明日はない。
理念に根ざした質の高い経営戦略の構築や組織・制度の整備、コンプライアンスの徹底、リスクマネジメント、あるいは、熱意ある人材の育成、質の高いサービス、卓越したオペレーション、生産性の向上が重要になる。
目先の業績だけに捉われず、志の高い「真の経営力」を身につけることが必要だ。
筆者:人材サービス総合研究所 所長 水川 浩之