【主張】予想通りの“低賃上げ”に
21春季生活闘争の山場を終え、状況が明確になりつつある。日本は、長期にわたる経済低迷、国内総生産(GDP)の伸び悩みで世界的地位が急落している。消費や需要の拡大により好循環を実現しなければならないが、今季労使交渉の見通しから考えれば再び厳しい結果を受け入れなければならない。トヨタに限っては要求通り9200円の回答となったものの、その他の自動車および電機、造船・重機については、要求を下回ったり賃上げ自体を見送るケースがめだっている。消費税増税に引き続く新型コロナウイルス感染症の拡大が影を落としている。
3月17日、今季労使交渉の流れを占う金属労協の集中回答日を迎えた。トヨタ自動車は要求通り手当などを含めた賃上げ回答額が総額9200円となった。前年の賃上げ額は8600円であり、同社の好調振りがうかがえる。日産自動車も前年と同様7000円の回答を得たが、ホンダについては賃上げ見送りとなっている。業界の中でも好不調が明確である。
連合の中間集計では、定昇込み平均方式で5563円となり、賃上げ率1.81%となっている。前年比で278円、0.1ポイントの下落である。今年年頭の本紙予想は、最終的に賃上げ率1.8%程度を下回る可能性があるとみていたが、残念ながらその通りとなりそうだ。
日本経済は世界的にみてもも低迷ぶりが著しい。経済的地位が低迷すれば政治的地位も下落し、あらゆる面で窮地に陥る。この数十年間、消費と需要の促進による経済規模拡大が国民生活にとっていかに重要であるかが身に染みて分かった。大幅賃上げが必要だが、残念ながら今季も期待はできない。予想していたこととはいえ、歯がゆい結果となりそうだ。
今季は新型コロナウイルス感染症の影響が強く、受け入れざるを得ないが、来季に向けて経済政策を間違ってはいけない。消費と需要の拡大に向けた強力な政策を打って、賃上げ交渉につなげたい。政府はもちろん、企業もパイの拡大を最大の目標として取り組む必要がある。