【主張】形式を整えても通用せず
フリーランスと思って仕事を任せていたが、一転して労働者と主張され、労働基準法上の権利を主張された、または団交を要求してきたなどといったケースが近年めだっている。技術革新が幅広く進展し、フリーランスが社会経済の支え手となってきた。企業としては、形式上、請負や委託契約を整えたつもりでも、脱法と判断されると大変なコスト負担を強いられる。政府が作成したフリーランスガイドラインは、これまでの知見を分かりやすく凝縮して解説しており、参考とすべきだ(=関連記事:労働者か否か判断 優越的地位濫用も防止 フリー指針)。
フリーランスは、多様な働き方の促進やインターネットを通じて短期・単発の仕事を請負うギグ・エコノミーの拡大の観点などから重要性が増している。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、フリーランスの就業に大きな影響が生じているのが実態。たとえば、発注が突然キャンセルとなっても契約書面がないと、何も主張できず泣き寝入りするしかない。
同ガイドラインは、フリーランスが安心して働けるよう関係各省庁が持ち寄った法令上の規制、知見を凝縮して示している。
とくに、社内などで就業しているフリーランスが、労働法令上の労働者と認定されるケースが近年めだっている。同ガイドラインは、難解な労働者性判断基準を事例を交えて分かりやすく説明を加えた。経営者、管理者として、フリーランス活用に当たり、わきまえておくべき知識だ。
労基法上の権利主張以上に大変なのが、労働組合法に基づく権利主張である。労基法上の労働者性判断より幅広い基準となっているうえ、労働組合がバックに入ると、単なる金銭上のコスト増では済まなくなる。経営者らは長期間にわたり団交に応じる義務が生じ、疲労度も増すだろう。
同ガイドラインでは、フリーランスが業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として存在した場合、事業組織に組み込まれていたとして労働者性認定の可能性が高まるとした。多くのフリーランスが、公的機関により労働者性認定を受ける恐れがある。形式的に請負・委任契約を整えても通用しない。