【主張】評価できる無期転換制度
厚生労働省内で労働契約法第18条「無期転換ルール」の見直し検討が始まった(=関連記事:「無期転換ルール」見直し 雇止め対策を検討 厚労省・検討会設置)。適用が始まる前後において最も懸念されたのが、無期転換申込み権発生前の雇止めが多発する可能性である。しかし、調査によると、27%の企業に無期転換者が発生しており、雇用安定効果が少なからず認められたうえ、雇止めに関するトラブルもとくに増加していない。個々には裁判紛争となるケースがあるものの、総体としては、肯定的評価ができよう。
無期転換ルールは、企業内で重要な戦力となっているのに、有期契約労働を何度も更新する不安定雇用を改善する目的がある。無期雇用転換して、労働条件を引き上げ、モチベーションを向上させれば業績アップにつながり、企業にとってもメリットがある。
調査では、27%の企業で無期雇用転換者がいたと回答している。約5割の企業では、無期雇用転換したフルタイム有期労働者の働き方や賃金などに変化はなかったが、約3割では「正社員」に昇格させている。この結果だけでも、無期転換ルールの意義は小さくない。
評判が良くなかったクーリング期間の設定も大きな問題とはなっていない。無期雇用転換申込み権の発生を回避するなどを狙いとしてクーリングを実施した企業は、6%に留まっている。都道府県労働局長に寄せられた雇止めに関する相談、助言・指導、あっせんの件数も、年間1万4000件程度で推移し、とくにめだった増加はしていない。
しかし、裁判例をみると、無期転換申込み権発生前の雇止め対策が巧妙化していることが分かる。一定の場合に無期転換する制度を設けているものの、不合理な要件や厳しい試験を課し不合格とする例はまだ理解の余地がある。再雇用を約束した上で雇止めをし、クーリング期間経過後に再雇用する例や、無期転換申込み権が生じる前に派遣や請負を偽装して形式的に他の使用者に切替える例などは、悪質、巧妙である。
厚労省は、無期転換ルールの拡大と改善に向け、雇止め防止策のアイデアを提案し、具体化を急ぐべきだ。