労災保険で企業を支える/D.I.S.社会保険労務士法人 代表社員 上山 明花
某監督の映画でもない限り、“デジタル”は感情を持たない。会社がこうしろといえば指示に従う。それが“デジタル”。その一方で、ヒトには感情がある。
「上司が嫌い」「給料が安い」「休みがない」、いいたい放題である。「人を使うっていうのは大変だよ」。A社はいう。どうしたら社員のやる気を引き出して、もっと良い会社が作れるのか。経営者が頭を抱える問題の1つであろう。
そんな悩みに私たち社労士は、「労災保険」でお答えしたい。どういうことだろうか。
万が一の事故やケガに対して、「会社が守ってくれた」と、従業員や家族に感じてもらいたいのである。かなりストレートな願望だが、それくらい強く労災保険を有効活用してほしいと思う。いざとなったら会社が助けてくれるという信頼感は大きなモチベーションとなるからだ。
その第一歩として、事故やケガの報告を受けたらまず労災ではないか確認していただきたい。見落としがちなのが会社の行き帰りに起こる事故、通勤災害である。
あなたがもし従業員で、朝から大事な打ち合わせがあるにもかかわらず、事故に遭った。会社に報告しなければならない。どう感じるだろうか。気まずい、会社に迷惑がかかる、どうしよう。
そんな時、第一報を受けた会社がすぐにアクションを起こし、保険手続きをスムーズに行ってくれた。治療費の負担もなく済んだとなれば、なんとありがたいことか。
大きな事故ともなれば最悪のケースでは死に至る。労災保険から年金を受けられるかもしれない。会社が遺族とコンタクトを取り、年金手続きを率先して行った。こうしたエピソードは語り継がれる。
やってあげたというと恩着せがましく聞こえるが、そのくらい前のめりに労災保険を活用してもらいたい。保険料のアップを気にする会社も少なくないが、通勤災害はその対象外で、業務上災害の場合も1度や2度使ったくらいで保険料は上がらない。仮に上がったところで、従業員の信頼を獲得し、企業利益につながるのであれば万々歳ではなかろうか。
労災というと、小さな会社ではまず経験がない。あるかないかの事故に対し影が薄い労災保険であるが、実はとても手厚い保険なのだ。弊所は労災保険を通じて企業の発展を支えたい。「company(会社)」の語源は「一緒にパンを食べる仲間」からきている。ヒトが集まり仲間となり、目的を達成するための組織が会社である。まずはヒト。DX推進が叫ばれる今、私たちがヒトにできることを、今一度考え直していきたい。
D.I.S.社会保険労務士法人 代表社員 上山 明花【神奈川】
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