【道しるべ】3S&5S “安全の母”が生む効果は多様
現場での実践に裏付けられた言葉には、要目を的確に表して得心させるものが多い。本誌2月1日・15日号の特集で紹介した3Sと5S活動に関しての用語と機能表現などは、その好例といっていいだろう。
まず、これまで数多くの事故を目の当たりにしてきた経験から「安全は属人的」、「事故の起きた現場は例外なく汚い」と断じ、ゼロ災の具現化には“属人性から脱した安全管理のシステム化”と“汚れを排する5S活動”が必要・十分条件と説いているのはアサヒビール西宮工場の竹本秀明統括工場長。5S活動は、生産性・品質・モラールなどを下支えしていて、樹木でいえば根に相当すると述べている。
また、実践のプロセスと結果を見える化し、職場の全員を巻き込み、人を動かす理論をもって展開される正しい5S活動は“気づき・思考・対話・行動”を育(はぐく)んで人の意識を変え、さらには企業経営の質的向上と事業利益につながるとも――。整理・整頓・清掃・清潔・躾の徹底が人と組織に及ぼす好影響は計り知れないと竹本さんは強調して止まない。
その5Sを“ものづくり改革”の観点から3Sに絞り込み、物の置き方と表示への関心を引き出して働きやすいためのアイデアを競い合うまでにしているのが神戸製鋼所・播磨工場。
特集記事では作業工具の“整理術”を例に挙げているが、ほかにも階層別パトロールの徹底と管理職も含めた全従業員による工場内清掃など、自職場に合ったテーマを設定しての取組みが行われ成果を上げている。「最初は整理・整頓から。それがキチンとできるようになれば清掃も心がけるようになる。すると、現場の清潔が保たれることになり、躾にもつながっていく」とは製造室加工係・橋本寛志係長の弁だが、これは5つのSの性質がおのずともたらす連鎖現象というものだろう。
両工場の例からは「安全の母といわれる3S(5S)」が生み出す効果の多様さを、今さらながらに知らされる。