【主張】ブラック企業の汚名返上
東京証券取引所は、2022年4月4日、現在の東証1部・2部、ジャスダック、マザーズなどの市場区分から、新たにプライム、スタンダード、グロースの3つの市場に再編する。
最上位のプライム市場の上場基準を厳格化し、世界にも評価される企業グループとする狙い。適用するコーポレートガバナンス・コードも高度化する必要があるとし、初めて「労働環境への配慮」「公正・適切な処遇の実現」を盛り込み、積極的・能動的に取り組むよう求めた(=関連記事:コーポレートガバナンス・コード 「労働環境への配慮」を明記 プライム市場設定で 東証)。
証券市場では、これまで脇役だった労働・処遇問題が、コーポレートガバナンスの柱の一つに浮上したといえる。大企業ほどブラック化する傾向にあることを考えても、上場企業は労働法規制全般の習得・遵守を強化する必要性が強まった。
市場区分再編は、東証一部上場企業の数が増加し過ぎたため、最上位市場として質が低下していることや区分の不明確性が要因とされている。国内外の多様な投資家から高い支持を得られる「魅力的な市場」を提供する必要があるとし、プライム市場の新設に至った。
コーポレートガバナンス・コードも改定し、気候変動などの地球環境問題への配慮とともに、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮、公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引を規定した。上場の際の考慮事項として労働問題や従業員の処遇を追加したことになる。
社会問題化しているブラック企業には、労働法規制に反する中小・零細企業が多いが、上場大企業もめだっている。しかも、大規模、悪質な場合が多い。事実上、日本の上場企業全体の信用棄損につながっている。
最近の報道では、イギリスのロンドン市場に新規上場したデリバリーサービス企業において、配達員の低時給が表面化し、公開価格から大幅下落したという事例があった。
アメリカと比較し多くの面で後れを取る日本市場だが、今回の区分再編と労働・処遇問題の重視で、世界的により注目される投資市場に発展して欲しい。