【主張】需要拡大で製造業を守れ
厚生労働省などが作成した、令和2年版ものづくり基盤技術の振興施策(ものづくり白書)は、日本の製造産業の現状と将来のあるべき姿を的確に表しているが、必要な経済政策が伴っていない不幸な状況にある(=関連記事:20年で157万人減少 製造業の就業者数 厚労省白書)。製造業就業者数の減少が続くなか、デジタル技術の導入をはじめとする設備投資の強化が不可欠である。政府は、需要不足によるデフレ傾向からの脱却をめざした経済政策に専念すべきである。
日本の経済社会の強みは、中小企業を含む製造業におけるものづくりであることは明らかである。裾野の広い自動車や製造機械などの分野で、世界を一歩抜きん出ている。この分野を守り、発展させていくことが日本全体の成長につながる。
しかし、同白書は製造業就業者数の長期的に減少傾向にあることを強調している。製造業の就業者数は、2002年に1202万人いたが、20年には、1045万人に減少した。今のところ優位にある製造業といえども、後継者不足問題もあり安泰ではない。
必要なのは、デジタル技術を中心とする設備投資の強化による生産性向上である。同白書は「労働生産性の向上の実現には、昨今注目されているデジタル化の流れに対応していく必要がある」と語っている。つまり、ICT、IoT、AI、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの導入である。
日本の製造業が、世界に伍して優位な立場を維持するにはとにかくデジタル化を急ぐ必要があるが、経済政策が伴わない現実を指摘したい。企業における設備投資の活発化には、先々の需要拡大見通しが不可欠である。日本は、これまで数十年にわたり、ほとんど経済成長せず、デフレ傾向から脱却できないでいる。需要が見込めなければ、設備投資は減退せざるを得ない。
今年の「骨太方針」では、デフレ傾向が続く中で、「財政健全化」「緊縮財政」に突き進む気配が濃厚である。プライマリーバランスを黒字化し、新規国債発行額を確実に減らすことが必要というのだ。設備投資を真に後押しする経済対策に転換すべきだ。