【道しるべ】基本心得 今だからこそできる“原点”確認
当社出版の小冊子に『事故災害を防ぐための基本心得・基礎知識』がある。ポケット判サイズで90ページ余。建設作業員や一人親方向けの編集となっているが、近く製造業などを対象とした改訂版の発行も予定されている。
序章「安全と健康は先取りするもの」「被災の可能性ゼロはありえない」から始まる構成は、「(職場では)どんな災害が発生しているか」、「ケガと健康障害から身を守るには―ルールと手順を厳守しよう!」、「知っておきたい現場活動のあれこれ」、「災害が起きてしまったときの対応」と続き、締めの章には「ことわざ、格言に見る知恵と教訓」が挙げられている。
冊子名からもお分かりのように、労働に伴う負傷と罹病を防ぐための心構えと手立てをまとめた内容は“職場安全衛生の常識”でもあり、とくに新入社員や教育を受ける機会の少なかった人などには、ぜひとも知っておいてもらいたい事柄といえよう。
ここに「事故災害防止の基本・基礎」を取り上げたのは他でもない。3月11日の地震・津波・原発事故による三重の被害が発生して以降、これまでにない緊張感をもって「安全」が語られ、「人命の尊さ」を思うこともひと方でない情況にあるからである。その雰囲気を汲み前号小欄では、主に安全安心に毀損がなかったか軽微に済んだ職場のスタッフに向け、だから今こそ身近な安全の現実を真摯に再考しようと呼びかけた。その思いは、依然変わらない。
それに加えて勧めたいのは、現在であれば人々の心情に訴えて得心をえられるはずの安全の原点(あるべき形態)について改めて確認し合う場面とか機会を設け、無事故無災害への意志を固めたいということである。これは、今を逃すと時機を失することになりかねない。
前記冊子が頭に浮かんだのは、顧みて確かめるべき安全の原点とは何かと考えているときだったが、平易簡潔な説明が個々人の理解を促す一助になればと紹介した。