【道しるべ】スローガン こめられた意味を吟味しよう
ことしの全国安全週間のスローガンは『安全は家族の願い企業の礎創ろう元気な日本(にっぽん)!』――。
毎年、災害防止活動の眼目、メーンテーマとして織り込まれていた“リスク低減、トップの決意、安全文化”などに代わって、「願い、礎(いしずえ)、元気」がキー・ワードとなっているのは、震災以後の大局に目をやってのことだろう。
同週間実施要綱の主旨の項には「被災地が一日も早く安全に復興するとともに、働く人が仕事に働きがいを感じ、そのご家族が安心して暮らせる元気な日本を創る必要がある」、また「企業を支えるのはそこで働く人」、その企業の力の源泉は「安全に働くこと」にある、と記されている。
いつになくハイトーンな呼びかけは、自然災害による激烈な“安全破壊”がいかに深刻であったかの別証明ともいえるが、それに応じて安全再考に気持ちが傾くのは誰しも同じだろう。小欄でもここ両三度、苛烈な警鐘を真摯に受け止め、自身周辺の安全を見直すべきと述べてきた。生ぬるい安全観を排して、安全の基本と原点に立ち返ることの大切さについても触れている。そのアピールは今も変わらないし、むしろ重ねての想いが強い。
6月は安全本週間に向けた準備期間。前記要綱には事業場において実施すべき事項が列記されていて、安全活動に係る総点検の対象項目でもあるとされている。管理体制、自主活動、教育、労働条件、業種別特定災害対策……等々の現実や実態のチェック・再確認は例年どおりであるが、ことしに限ってはそれぞれが、“安全を最優先する企業文化の醸成”と“安全に働く”うえで必要不可欠な事項であることを改めて意識しながら実施してもらいたいものだ。特に災害防止を司って左右する立場にある人たちには、そうあってほしい。
厚生労働省の統計によると、昨年の労働災害による死亡者は1100人を超え、前年を上回っている。この現況も併せ考え、安全への認識を新たにしたい。