【ひのみやぐら】熱中症対策に業界が全力
暑さが本番を迎えた。すでに厚生労働省の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」が始まっているところだが、今は重点取組期間の真っ最中だ。令和2年の熱中症による死亡者は22人で死傷者は959人。過去10年間の発生状況をみると直近3カ年の死傷者数は47.4%を占めており、ここ数年は高水準となっていることが分かる。こうした状況から熱中症に対する備えは前倒し傾向にあり、同キャンペーンも4月を準備期間に5月から始められ、9月末まで実施することになっている。
本来なら6月の全国安全週間準備期間で、各労働基準監督署の説明会が開催されていただろう。企業の経営者や安全衛生担当者に熱中症予防を直接呼びかける絶好の機会であったが、依然終息の見えないコロナ禍により、今年も中止せざるを得なかった労基署は少なくない。
一方で経済活動は「待ったなし」だ。働く人の安全を放置することはできない。行政も手をこまねいているわけではなく、感染症対策を十分に行いながら、啓発活動を行っている。東京労働局では、熱中症予防対策セミナーを実施。急な気温上昇に注意するよう呼びかけ、体が暑さに慣れることで、熱中症に対応する熱順化の重要性を解説した。熱中症予防を主眼としたパトロールを行ったのは、愛知労働局。昨年、管内で熱中症による労働災害が全国最多となったことから、早期に集中的に取り組むこととした。大阪労働局はクールワークキャンペーンのPR動画配信、神奈川労働局では、オンライン研修会の開催などインターネットを活用した周知活動も行われている。
中央労働災害防止協会では、シンポジウムを開催。感染症対策のため、会場の参加者は少数とし、オンラインとの同時配信で行った。マスクを着用しても体温上昇は認められないものの、吸気の二酸化炭素濃度が上昇することや息苦しさの感覚が残るなどコロナ禍での熱中症対策に、参加者は真剣に聞き入っていた。
感染予防と熱中症対策を両立させていかなければならないのは、今年限りでありたいと切に願う。