【主張】法令を理解し「炎上」防げ
厚生労働省が設置した技術革新と労使関係をテーマとする検討会報告書(案)は、SNSへの書き込みが「炎上」することにより、企業の安定的な経営を脅かすケースが発生していると明言した(=関連記事:SNS「炎上」 経営上のリスクに 厚労省検討会が警鐘)。ICTツールの急速な発展が新しい形の労使紛争を生起させている。経営者、管理者はICTツールの影響力、重大性を良く理解し、「炎上」を未然に防ぐ配慮が必要である。
同報告書によると、インターネットが身近になったことで、SNSなどのコミュニケーションツールが多様化し、その影響力が大きくなっているとみている。個々の労働者による情報の受発信の在り方が変化し、労使関係や労使コミュニケーションにも影響が及んでいるほか、SNSへの書き込みが「炎上」することにより、企業の安定的な経営を脅かすケースが発生、経営上のリスクとしている。
企業の多くは、ネガティブな情報や批判がSNS上に集中的に投稿され、被害を被るケースを何度も経験しているはずだ。製品の不買運動が中心といえるが、内部情報である労使関係や労働条件の欠落部分が突然に投稿、公開され「炎上」することによるダメージも小さくない。ブラック企業のレッテル貼りにより、優秀な人材が採用できなくなる恐れが高まる。最近では、上司らのパワーハラスメントの実態などが誇張されつつ投稿され注目を浴びている。
企業としては、労使関係や労働条件の実態などの内部情報は、最早、リアルタイムで外部に漏洩し、批判に遭い、「炎上」する可能性を前提としなければならなくなった。企業規模の大小を問わず、「炎上」によるダメージは、長期間にわたって続く。
SNS運用マニュアルを作成し、社内に周知するとともに、常に投稿内容のチェックを行い、「炎上」の可能性がある場合には早期の段階で「火消し」を行う必要がある。しかし、何より大切なのは、日常的に安定した労使関係の形成に配慮し、違反のない労働条件を保つことだ。労働法令の幅広い理解とその遵守を最優先とする経営をしていれば、ことさら「炎上」を恐れる必要はない。