【道しるべ】RAへの警鐘 「KYと混同」などの問題指摘が
RA(Risk Assessment 、リスクアセスメント)が、平成18年の改正労働安全衛生法の規定により事業者の努力義務とされてから6年が経過した。「労働者の就業に係る危険性と有害性の特定(洗い出し)、発生する恐れのある負傷・疾病の重篤度や発生可能性の見積り、リスク低減措置の検討・実施」という一連の流れをもって行われる危険源の排除は、先取り型の安全施策として推奨され普及を見るに至っている。
が、昨年あたりからRAの実情に対する警鐘とも聞こえる意見や論評が表面化し始め、本誌でもそのいくつかを紹介した。平成23年2月1日号で野中格氏が指摘された「建設業界における誤解」、今年の2月1日号から3回にわたり菊一功氏が強く説かれた「リスクアセスメント見直しの必要性」――などである。そのなかで両氏がとくに問題視していたのは、従来からの活動との“混同”によって生じるRA本来のあり方からの乖離だった。
混同とはKY(危険予知)活動とのそれで、潜在危険を見つけ出すという類似点から両方を同一と捉えて疑わないケースが少なからずあるのだとか。ご存知のように、作業開始前の危険確認、注意喚起、行動上の留意点決定に主眼を置いているのがKY活動であるのに対し、RAは危険源についての事前調査結果を機械設備、作業計画、作業手順などの変更・改善に資することを目的としている。したがって実施の時期・手順も異なり、リスク情報の収集管理・評価・活用法などは全くの別ものといっていい。
そのへんの区別なしに(あるいは誤解したまま)危険予知の実行で事足れりとしていては、RAが狙いとする本質的な安全化は期し難いし、災害減という現実的な成果も得にくいだろう。確かに事前評価とそれに基づく措置実施までにはかなりの時間を要して手間もかかる。しかし、RAへの取組みは所期の整備がなされたとき効力を現わし、以後の安全管理活動をスムーズにするとの声が実施企業からは上がっている。