【道しるべ】ことわざ訓 “機知に富んだ語り”が心に残る
全国安全週間を迎え、各地各所の職場・現場ではトップ以下、主要な職務にある人たちによる訓辞、スピーチがセレモニーのひとつとして行われていることと思う。その内容だが、安全第一に向けての話となるとどうしても表現限定の紋切り型になりがちなところがある。これは普段の朝礼や集会の場でも同様で、説教じみた堅い話がいつもながらだと、耳にタコとばかりに聞き流されかねない。
そこで、ときには話の味付けとして「ことわざ・格言」の類を混ぜてみると聞き手の気持ちを振り向かせるうえで効果があるのではと考えたのだが、どうだろう。
故事成語、諺(ことわざ)というのは人間の心理や習性の有り様を(多少皮肉っぽく捉えたりもして)簡潔に表現し、生活上の知恵あるいは戒めとして語り継がれてきている。滑稽さや可笑しみの中に教訓を滲ませた言葉には、安全衛生に通ずるものも多い。二、三を挙げてみると、
『背中の子を三年探す』(自分の背中に子供を背負っているのに、子供がいない、いなくなったと大騒ぎで探すこと。近くに探し物があるのにわざわざ遠くを探す愚かさを言いながら身辺の整理整頓の大切さを諭している)
『芋茎で足を衝く』(柔らかい芋の茎ででも足を刺すことがある意味で、油断がもとでの思わぬケガへの用心・注意を促すもの)
『ひびの入った壺は長くもつ』(ひび入りの壺は割れないようにと大事に扱う。健康管理での一病息災と同じか)
それぞれの意味にはもっと広がりがあり、なるほどと頷かせる面白さが多々あって心に残る。で、その解説だが、実をいえば現場管理者や教育講師として産業安全衛生に長く関わってきた方が、50年にわたって書き溜められた「ことわざ・格言にならう安全衛生訓(160余)」の一部をさらに要約して紹介させていただいたものである。それが近く1冊の新書に収められて小社から出版となる。機知に富んだ話のネタ本・味付け本として是非お手元に、とお奨めしたい。