【道しるべ】危険予知 本家本元の“深化”に習いたい
若者ことばのKYが、空気ノ読メナイもの言いを指して使われるようになったのはいつ頃からだろうか。テレビで「こいつ、ケーワイ!」と仲間をからかったりするのを初めて見聞きしたときは何のことやら意味不明。あとで空気読めず云々と知ってからは、なにやら“専門語”を誤用されているようで嫌な感じがしたものだった。別に気負って言うつもりはないのだが、KYといえば「危険予知」なのである。
KYT、KYK、現地KY、1人KY、交通KY、健康KY…etc。1974年に鉄鋼会社が開発し、これに着目した災防団体が生産現場向きの安全先取り手法として全国に広め、併せて多数のトレーナーを輩出し、その実効性と実績から行政も災害防止手法のひとつとして推奨するに至って採用事業所増にも拍車がかかった。危険予知訓練・活動は、今や職場で行われて当然と認識されるまでになっている。
しかし、急速に普及したKYにも、日常的に実践され続ける活動にありがちなマンネリ・停滞傾向を懸念する時期があった。2004年に中央労働災害防止協会がまとめたヒューマンエラー防止手法に関する調査研究報告書では、「更なるレベルアップのために」という前提で一部の好ましくない状況が挙げられている。例えば「作業者が重要性を感じなくなっている/取り上げる内容や発言者がいつも変わらない/効果を評価するツールがない」――。これは恐らく、誰でも何処でもできる簡便な安全活動の利点が、意に反して易(やす)きに流れる方向へと作用したためと思われる。その種の現象は現在においても散見されるという。
そうした行き詰まり状況打開の方途を探るうえで参考になる取組み例が、本誌前号特集で紹介されている。KYの本家本元(住友金属工業)が、刻々変化する作業実態や危険度の違いを直視しながら考案してきたKYのいくつかである。これに習って活動の脱形骸化と蘇生、さらには深化を図ってはと思う。