【道しるべ】国の災防計画 新たな指導強化施策に注目を
国の第12次労働災害防止計画(平成25年~29年)については、本誌でもすでに骨子(案)のいくつかを報じている。ここでは厚生労働省の労働政策審議会安全衛生分科会での検討内容から、計画の方向性と施策策定の背景にある問題意識に関して要旨を整理してみたい。
まず、労働災害の現況だが、長期的には減少しているものの、建設業・製造業での重篤災害多発が依然として絶えず、さらには第三次産業などでの災害増によって平成23年には33年ぶりに2年連続での労災増加を見るに至っている。
また、東日本大震災復旧・復興工事の本格化、建設業者・技術者・技能労働者の集中により、被災地以外の地域での人材不足(質の低下)、現場管理の劣化などが懸念される状況にある。陸上貨物運送事業では、災害の約7割にも及ぶ荷役作業での被災防止が喫緊の課題と捉えられている。
健康面に目を転じても、メンタルヘルス不調者の増加防止がますます重要視され、化学物質による職業がん問題が印刷業での胆管がん集団発生を機に再浮上してきた。業務上疾病の大半を占める腰痛への対応も引き続きの重点事項としてある。
このほか業種横断的な課題としては、高年齢労働者の増加を見据えた安全衛生上のリスク低減、パート・アルバイトなどの非正規労働者に対する教育促進、中小規模事業場へのリスクアセスメント普及、受動喫煙防止――等々がある。
それぞれの課題には「講ずべき施策」が具体的に示され、災防計画に盛り込まれる予定だが、特徴的な傾向のひとつとしては「(これまで)行政の重点対象としてこなかった業種への取組み強化」が挙げられようか。第三次産業(とくに小売業、社会福祉施設)に対する事業場別の対策の類型化、あるいは陸運業における荷主との役割分担への指導強化などは、その一例である。
本誌では、各種施策決定に即応した報道を期していくが、とりわけ行政による指導強化についてはいち早く詳報をお届けしたい。