【道しるべ】「見える化」ツール イラストでの注意が記憶に残る
「安全の見える化」は現在、災害防止に必須の方策とされ、可視的対策全般を指すキーワードともなっている。その「見える化」への取組みを、ツール開発の経緯をたどるかたちで紹介した活動発表が全国建設業労働災害防止大会であった。安全衛生教育部会における鹿島建設㈱東京建築支店安全環境部の『今日の作業の災害防止―注意ポイントのイラスト化』(発表者:浅谷輝暁課長)である。
内容を要約すると、開発に当たって担当スタッフが持っていた問題意識は、次のような実態に対してだった。「建設業では短時間で現場が変化していくため、製造業のように工学的に完成度の高いシステムの構築、安全施設の整備が難しい」、したがって「作業員個人の安全意識と知識を高め、行動面から災害防止を図る必要がある」。そのため工種別安全ルールのリスト化、現地KY活動の推進補助などを試みてきたが、「文字による注意喚起では理解されにくい。また、知識として残らず、意識高揚までには至っていない」のが実情だった。
その解決策の一環としてスタッフは昨年、災害事例を動画化したDVDを制作。危険感受性を刺激するものとして大好評を得た。が、一方では「その日の作業に対するタイムリーな教育には不向きな面がある」ことが検討課題として残った。
そこから新たに設定されたテーマが「当日の作業に合致するルールや注意点、想定される災害などを現場で特定できるツールの開発」で、特に作業員が具体的にイメージできることを重視し、「ルールにイラストを付加した工種・作業別シートの作成」に着手することとなった。
250点を超えるシート集は完成とともに作業現場に配布され、職長からは「注意点がビジュアルな表現で強調されていて記憶に残る」、「KYに効果的」、「経験不足の作業員に対し注意しやすい」といった感想が寄せられ、早くも効力を発揮しているそうだ。(イラストシートは「きょうの作業の安全ポイント集」として小社から発売中)