「デジタル社労士」の時代/社会保険労務士法人大野事務所 代表社員 大野 実
1964年の東京オリンピックが、首都東京を大きく変え、その後50年以上にわたり、東京のみならず、今日の日本社会の変貌へとつながっていることは、我われ同時代に生きる者の等しく感じることである。今また、2020年の東京オリンピックに向けて、東京は再び大きな変化に向かっており、これから3年間の東京の変貌が、オリンピック後の数十年にわたる日本社会の変化の基盤となるだろう。
前回は、戦後復興を果たした日本の首都、東京の都市としての近代化が変化の中心にあったが、今回の変化のベースにあるのは、社会のデジタル化である。社会が変われば、行政もビジネスも変わる。政府はかつて「電子政府」といっていたが、今では日本のみならず先進各国が「デジタル政府」をめざしている。これは単に、紙を電子的処理に置き換えることから、行政の在り方全体を、インターネットを前提としたデジタル社会へと対応させる質的な大転換である。
同様の対応が、社労士業界としても不可欠な時代となった。いわば「デジタル社労士の時代」の到来である。数年のうちに、ほぼすべての社労士の手続き業務は電子化され、社労士の事務所と業務の在り方もデジタル化が不可欠となる。これは、事務所の規模の大小、事業年数の如何にかかわらず、早急に取り組まなければならない課題である。
社労士にとって今、「クラウドへの対応」「ITやAIを活用した業務改善」そして、「新たな人事労務の分野への挑戦」が課題となる。
一方、我われ社労士が専門とする人事労務分野は、今や9割近い人々がその所得を雇用に依存する「雇用社会」である。この雇用の職場環境がデジタル化へひた走っているのである。将来に向かっても尽きることのない課題に満ちた世界であり、仕事の可能性はますます膨大になっていく。
デジタル化される社会や企業への対応を、社労士業界としても強力に進めなければならない。デジタル化は、士業としての競争力の基盤でもあるのだ。
社労士の業界では「電子申請の推進」をはじめ、セキュリティー対策強化」「社労士版PIA制度の導入」、「社労士版個人情報保護認証制度・SRPⅡ制度」、JIPDECが運営するサイバー法人台帳ROBINSにおいて展開する「経営労務診断サービスの推進」等の事業を進めている。
「デジタル社労士」のコンセプトは、急速にデジタル化する社会で社労士の役割を果たすための「未来の選択」といえるだろう。
社会保険労務士法人大野事務所 代表社員 大野 実【東京】
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