【今週の労務書】『中小企業の人材開発』
2021.07.24
【書評】
顧客との接点が機会に
日本企業の99%は中小企業が占めている。しかし、これまで現場のデータ取得の困難さなどから、中小企業の人材開発はブラックボックスとなっていた。本書は中小企業の人事施策を含めた人材開発の実態と、学習メカニズムの解明を試みている。実態を明らかにするため、アンケート調査を実施。その結果、中小企業の人材開発は大企業に比べ、従業員の行動に依存する面が強い実情が判明した。
この課題の解決策として著者は「顧客からの学習」を挙げている。大企業と違い、職場内のネットワークが乏しい中小企業では、顧客との接点が学習の機会になっているという。「人材開発の重要性は分かっているが、本人任せになってしまっている」という人事担当者におすすめしたい。
(中原淳・保田江美著、東京大学出版会刊、TEL:03-6407-1069、税込み3740円)
令和3年8月2日第3315号16面 掲載