【道しるべ】“問いかけ”活動 個人の「状況認識力」高めそう
人間の状況認識には3つのレベルがあるという。レベルⅠは「業務を遂行する上で事象の変化傾向に敏感に気づく段階」、レベルⅡは「何事が起こっているかを理解する段階」、レベルⅢは「その後の変化傾向を予測する段階」――これが認知心理学での区分だそうだ。
このうち、レベルⅠの「変化への気づき」は“警戒心”によって高められ、単に神経を研ぎ澄ますだけでなく、注意を向ける具体的な対象の絞り込みにもつながるとか。これを活かすべく考案されたのがKY(危険予知)活動で、どの職場でも作業開始前に欠かさず実践されるようになったのは周知のとおりである。
そのKYだが、活動歴を重ねるうちに職場事情を勘案しての工夫が施されるようになった。とくに個人の意識に照準を当て、気づきの感覚を促すことに重点を置くケースが増えていて、最近の特徴的傾向になっている。本誌前号特集で取り上げた「問いかけKY」、今号インタビューで主題となった「2人1組での自問自答KY」などは端的な例だろう。
どちらの場合も、人的な面に対する安全意識の薄さや集中力の足りなさをカバーする目的で始まり、実践補助材を作成し、実施後は付加的効果を生むまでになっている点で共通している。
詳しくは両記事をお読みいただくとして、作業者(あるいは自分自身)へ向けての「問いかけ」では、まず相手の意識を呼び醒(さ)まし、「応答」では頭の中の整理(作業知識や行動に思いを巡らしての確認・チェック)をさせることになるから、第一の効能として瞬時といえども危険への意識感覚を持ってもらえるようになる。活動に付随しての効果としては、声(言葉)を発してのやり取りによって、日常的な会話・コミュニケーション・相互協力にも好影響を及ぼすのだという。
マン・ツー・マンないしは1人だけでのKY活動は、危険・有害への状況認識をより密度の濃いものにすることが期待できそうだから、あなたの職場でもやってみません?