【道しるべ】心身のSOS 鈍らせたくない予兆への注意
今年の全国労働衛生週間のスローガンには「見逃すな心と体のSOS……」とある。その、見落としてはならない状態とはどのようなものなのか、現況を中央労働災害防止協会編による「平成23年度・労働衛生のしおり」から見てみよう。
近年、横ばいとなっている業務上疾病者数は昨年の場合、熱中症多発によって増加に転じ8111人。同じく一般定期健康診断で所見ありとされた割合も52.5%と増えつづけている。
常態化が憂慮されて久しい年間自殺者数3万人超のうち、勤務問題に起因あるいは動機のひとつとなり自ら生命を絶った数は約2600人に上る。また、現在の仕事や職業生活に対し不安・悩み・ストレスを感じている労働者は6割を占め、メンタルヘルスがらみの理由で休業・退職するに至ったケースも少なくない。精神障害などによる労災認定件数も300件前後の高水準で推移している。
これが心身の健康問題に係る各種調査に現れた特徴的傾向だが、統計上の数値にわずかながら変動はあるものの、それを分析・総括しての概況説明はハンで押したように変わらない。防止に向けた対策においても然(しか)りである。そうした現実があるからこそ、働く人たちを取り巻く環境を憂えてのSOSが職場から発信されてくるのだろう。が、相変わらずの事象が人びとの目に常況と映り、普通のことなどと捉えられていたりすると、危険信号への反応も鈍くなる。
労働衛生・健康管理には日常的対応ですむレベルから、極めて専門的な知識を要する領域まで多岐に亘って措置内容を異にする多様性がある。それに加え、防止の対象とする疾病・障害発生の多くには有害要因との接触を重ねて遅発するという特殊性がある。
そのへんを見据えて予防に十全を期するのが事業者の責務なのだが、これは就業者側にもいえることで、常に自身の変調に注意をめぐらして予兆をキャッチするぐらいでないと、思いもよらぬ健康阻害を見逃すことになるのだ。