【主張】雇用保険料は現状維持で
厚生労働省の令和3年版労働経済白書によると、雇用調整助成金の特例措置が新型コロナウイルス感染症の雇用対策に大きく貢献したことが実証された。感染者が急増し、緊急事態宣言が繰り返し発令されるなか、国民経済を救済できるのは、唯一、政府の経済対策だけである。雇調金の特例措置継続は当然として、この秋にも大規模補正予算を組んで新たな支援を打ち出すべきである。
本紙報道では、雇調金などによる完全失業率抑制効果は2.6%ポイントとしている(関連記事=雇調金特例 失業率2.6%押下げ 厚労省が試算結果 3年版・労働経済白書)。雇調金の活用がこれほど広がっていなければ、リーマン・ショック時に匹敵するダメージを受けていただろう。今回は、厚労省が時機を失することなく、コロナ感染症対応に徹したことが功を奏した。
統計では、休業者が2020年4月に前年同月差420万人へ激増したが、完全失業者は緩やかな増加に留まり、失業率は高くてもほぼ3%水準に抑え込んでいるのが現状である。有効求人倍率も20年9月に1.04まで低下したが、その後は緩やかな上昇傾向で推移している。
問題は今後の対応である。雇調金財源の枯渇が俎上に上っていることから、特例措置を停止したり、財源確保のために雇用保険料を引き上げることのないよう求めたい。発表では、11月まで特例措置を続けるとしているが、その後も当分の間は継続する必要がある。雇用保険率を引き上げる動きに対しては、感染拡大防止が世界的、国家的課題となっていることを考慮すれば、事業主負担に頼らず、一般会計で手当てするのが妥当といえよう。
政府は、これまでに成立した補正予算のかなりの部分を消化せずに繰り越しているという報道がある。支出すべき予算を執行しないことで悪影響を受けているのは、中小労使や国民である。世界の経済成長率は21年に6.0%を記録するとされているが、日本だけが取り残されているのが実態だ。このままだと、日本の国際的地位の低下、国民の貧困化が進んでしまう。
今秋には、大規模補正予算で国民経済を浮上させる強力な支援対策を執行すべきだ。