シニア雇用の一助に/シニア社労士事務所 所長 一倉 美津子
日本の高齢化は急激に加速している。令和3年4月、改正高年齢者雇用安定法が施行され、会社のシニア雇用における働き方の変化がさらに加速し始めた。
しかし、まだまだシニアを「お情けで雇ってやっている」といった考えが透けてみえる会社も多い。その対応を受けるシニアの姿は、未来の「あなた」である。今は対応をとる側の人事部のメンバーも、いずれ対応を受ける側になる。そんな未来が想像できる会社と人事制度では、生産性向上はおろか、事業の持続の行き先も暗いのではないだろうか。
自分自身がシニアになってみて「これではいけない」という思いを強くした。シニアが誇りを持って安心して働ける。企業もシニアの力を有効活用できる。そんな社会をめざしてシニア問題に特化した社労士事務所の開設に至った。
若い頃は「定年退職」などはるか未来の話だった。しかし、自分にも定年は訪れ、しかもコロナ禍で所属会社の事業計画が大きく変わり、社労士としての仕事もなくなった。定年後の仕事として打診されたのは、営業事務の補助的な業務だった。
定年再雇用制度を利用すれば65歳まで残れるが、「やっぱり社労士としての仕事がしたい」という思いは強く、一念発起して「再雇用希望せず」と伝えた。そしてシニア専門人材会社シニアジョブとの縁もあり、今年6月、シニア社労士事務所の開設を迎えたのだ。
思えば私が定年退職を迎えた令和2年は、私だけでなく日本も世界も激動の渦にあった。コロナにより街並みから人々が消え、店の戸も閉ざされた。
時が止まり、廃墟のような街並みの誰もいない暗い店内で、電光ディスプレイだけが夏になっても満開の桜を流し続けていたのが不気味だった。街へと視線を戻すと、ディスプレイだけでなく街路のハナミズキやツツジが満開に咲き誇っていた。
「花が咲くってこういうことなんだ」
当たり前のように続くと思っていた日常があっけなく崩れても、花は変わらず咲き続けていた。
働くシニアは会社が思うよりも強い。シニアが働き続ける未来の到来も確実だ。シニアがお情けで雇われる時代が続いても、きっとシニアという花は咲くだろう。だが、咲いたその花をみて「美しい」と感じることができるだろうか。
日本のシニア雇用は過渡期にある。いつか「あんな時代もあったね」と笑って話せる日が来ることを信じて、私は自分の今をシニア雇用関連の諸問題解決に使いたいと思っている。
シニア社労士事務所 所長 一倉 美津子【東京】
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