【ひのみやぐら】トップが〝率先垂範〟を
厚生労働省と経済産業省、中央労働災害防止協会は、化学、鉄鋼、自動車などの各業界の経営トップからなる「製造業安全対策官民協議会」を設立した。昨年、鉄鋼業で死亡災害が相次ぎ、製造業全体を見ても平成28年は165件と前年よりも14件も増えていることから、現状を憂慮したものだ。
今後、協議会は年2、3回開催することとしており、7、8月ころに第2回の会合を行う予定だ。それに先立って製造業全体の安全意識を高めるため3月28日に「製造業安全対策シンポジウム」を開催した。このなかで明治大学の向殿政男名誉教授は、経営トップでのリーダーシップの重要性を指摘。企業のトップには顧客の安全(製品安全)、従業員の安全(労働安全)、企業体の安全(企業の安全)をすべて理解し、率先して取り組まなければならない役割があると示した。
また、トップのリーダーシップの下、リスクアセスメント、労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)、安全人材育成に取り組むとしている。
いうまでもないことだが、OSHMSの運用で最も〝肝〟となるのがトップによる方針の表明だ。ここがブレるとまず、PDCAサイクルが回らなくなるとみていい。このため、トップ自らがOSHMSに関する知識を習得することが必要といえる。担当者を選任し、その者に任せきりになったとすれば、運用を続けていくうちに形骸化してしまうのは想像に難くない。
トップが労働災害防止に強い関心を持ち、方針立案の検討を行う。次いで、全従業員に自らが方針の意味を説明、周知をすることで指導力が初めて発揮できるものと信じる。
「頭が動けば尾も動く」という諺がある。上に立つ者が行動すれば、下の者は自然と従うという意味だ。企業の安全衛生管理活動でいえば、トップの率先垂範は極めて重要で、ぴったりと当てはまる言葉といえよう。
同協議会の構成員には、わが国を代表する企業のトップクラスが名を連ねている。製造業の労働災害防止対策が、大きく前進するものと期待したい。