社労士による労働法教育/NPO法人あったかサポート 常務理事 笹尾 達朗
NPO法人あったかサポートは、労働と社会保障に関心のある社会保険労務士をはじめ、弁護士など専門士業のほかに研究者、中小事業主、労働組合役員など様ざまな市民が参加し、教育・情報発信・相談・ネットワーク活動を行っている。
筆者はその専従役員である。当会の活動の中心は、高校生や大学生を対象にした「働く前に知っておきたい労働関連法教育」の普及活動で、すでに10年以上の実績を誇る。
当初、「なぜ労働者の権利を教えるのか」「職場でトラブルを起こすことになる」などの声を同業者である社会保険労務士などから聞くこともあった。ところが、今や労働行政ばかりか社会保険労務士会など幅広い団体が同種の活動を行っており、隔世の感を覚える。
近年、労働力人口の減少を背景に若者の早期離職に対する国や企業の危機感は強い。
2015年に改正された「若者雇用促進法」の指針では、事業主に対して、労働法制に対する基礎知識の付与を望ましいこと、としている。
また政府が推進する「働き方改革」は、女性、高齢者、障がい者、社会的引きこもりの若者、がん・メンタル疾患の患者や介護離職者の職場復帰など「一億総参加型社会」の実現に向けて、外国人労働者さえ積極的に活用せざるを得ない状況だ。
今や企業の労働生産性を高めることは、至上命題であり、労働行政による過重労働とハラスメント対策の強化はそうした流れに沿ったものだ。
そうだとすると、個別企業に対する人事労務管理サービスが中心だった私たち社会保険労務士の生業も、次第にこれまで公務員が担ってきた公益サービスを代行する割合が高まってくるだろう。
国や都道府県からの委託事業が拡大している現実をみれば、それは明らかだ。
ところが、恥ずべきことに「ブラック社会保険労務士」と揶揄される事件が時に報道される。それは、私たち社会保険労務士の信頼を失墜させ、生業を狭めることにつながる。
いまや労働現場におけるコンプライアンスの普及活動を通じた職場環境の改善や労働条件の向上は、社会保険労務士の社会的使命である。
そうであるならば、私たち社会保険労務士による労使を問わない労働関連法教育の普及活動は、その礎を築く作業であるといえるだろう。
NPO法人あったかサポート 常務理事 笹尾 達朗【京都】
【公式Webサイトはこちら】
http://attaka-support.org/