【主張】意義大きい「底上げ春闘」
2017年春季賃上げ交渉において、「歴史的」と評価されるべき動きがあった。4年連続のベース・アップが達成されたとともに、従業員数299人以下の中小企業の賃上げ額が、大手、中堅を上回った。
3月末時点の金属労協の集計では、大手1126円に対し、中小は1268円だった。近年、労働分野においていくつかの「歴史的」な改革が進行しているが、今回の中小ベア拡大もその一つに位置付けていい。連合が前年からスタートさせた「底上げ・下支え」「格差是正」を主眼とした賃上げへの取組みが功を奏したものと考えられ、高く評価したい。
連合は、前年の春季交渉から賃上げの重点を中堅・中小に移した「底上げ春闘」に取り組んできた。その結果、全体の賃上げ水準は、景気回復、雇用情勢改善の局面にあるにもかかわらず微減傾向となり、物足りなさを感じざるを得なかった。
しかし、17年春季賃上げ交渉において、継続して取り組んできた「底上げ春闘」への努力が実り、中小のベア拡大を達成したことは、「物足りなさ」を打ち消すものである。中小の賃上げが大手をしのぐのは想定外であった。
雇用情勢改善が、人材難の中小企業を直撃していることは承知の上である。求人倍率の上昇、失業率の改善といった最近の雇用情勢が、中小企業を賃上げに走らせた背景として大きな比重を占めていよう。こうした環境改善を考慮に入れても、明確な結果を打ち出すことができた「底上げ春闘」の意義は大きいとみることができる。
中小企業の賃金底上げによるインパクトは決して小さくない。いうまでもなく日本の経済・産業は、中小企業の労働者が下支えしている。大手をしのぐ賃上げが広範な中小企業と労働者に行きわたれば、経済全体に与える影響は軽視できない。
政府目標となっている賃上げと消費拡大、デフレ脱却の好循環形成に向けて力強い押し上げ効果となる。「歴史的に大きな意義を持つ春闘」と話した金属労協議長の指摘に賛同したい。