【主張】無期転換制の周知強化を
厚生労働省が、平成25年4月に施行した「無期転換ルール」の再検討を始めている(関連記事=無期契約転換希望は2割弱 「現状に不満なし」 厚労省がヒアリングなど実施)。当初、最も懸念された雇止めの増加にはつながっていないようで安心したが、無期転換ルールに関する労働者の認知度が今一歩であると同時に、実際の利用状況が十分でない。今回の再検討では、まずは企業や労働者への制度の周知拡大に向けた対策を打ち、利用実績を伸ばすことが重要である。企業に対する規制強化などでこれ以上複雑化しないよう求めたい。
無期転換ルールの施行から5年を経過した30年3月末までに無期転換者が生じた企業の割合は27%と少数派だった。残りの66%は「いなかった」としている。労働者への調査でも、無期転換申込権が発生し既に申し込んだ割合がわずか3%、無期転換申込権が発生したが申し込んでいないとする割合が15%と低調。
原因は一つではないにしても、無期転換ルールの認知度が十分でないことがまず挙げられよう。「内容について知っていることがある」とする企業はさすがに64%に達しているものの、労働者の同じ質問では36%である。
そもそも、無期転換ルールに基づく無期転換を希望していない労働者が少なくないことも利用実績が伸びない一因といえる。無期転換を希望している労働者は27%しかいない。反対に「希望しない」が33%、「分からない」が35%もある。
無期転換ルールの施行で懸念された雇止めは、もちろん個別には発生しているものの、全体としての件数増加にはつながっていない。都道府県労働局が処理した雇止めに関する相談、助言・指導、あっせんの申請の件数は、この間ほぼ1万3000件台で推移している。
労働条件格差が広がるなかで、5年にわたって戦力化してきた有期契約労働者を無期転換するのは、労使双方にとって大きな意味がある。無期転換によって、将来的な雇用不安が小さくなるばかりか、長期雇用の後には労働条件の向上につながる可能性もある。制度の周知と無期転換のメリットなどをもっと強く発信すべきである。