欠かせぬキャリア開発支援/社会保険労務士事務所 オフィス・ワイ 山本 厚
ここ数年で働き方改革という言葉が広く浸透し、企業側、労働者側ともに働く意識に変化が現れようとしている。平成29年に政府が発表した働き方改革実行計画によると、同一労働同一賃金の実現や長時間労働の是正とともに、複数の項目にわたってキャリア開発支援の必要性が挙げられている。
具体的には、①女性や若者に向けた再就職支援、②病気の治療と仕事の両立、③子育て・介護などと仕事の両立および障害者の就労、④新卒以外の多様な採用機会の拡大、⑤高齢者の就業促進、⑥外国人材の受入れ――などである。
こういった現況を踏まえ、われわれ社会保険労務士も従来の業務に加え、労働者へのキャリア開発支援の領域に踏み込んでいく必要があると考えている。
ここでいうキャリア開発支援とは、これまでの業務の延長線上にある「人事制度の構築や従業員教育」といった業務のことではなく、労働者への「職業あっせん」のような業務のことでもない。
これらもたいへん重要であるが、ここでは労働者のキャリア開発を支援するコンサルティング業務のことを指している。
労働法規を熟知し人事労務管理のプロである社会保険労務士ならば、労働者のキャリア開発に関して、より具体的でより実践的な支援が可能なのであり、その労働者の成長に大きく寄与できると考えているのである。
加えて、昨今の労働市場においては、終身雇用制が崩れ始め、企業や従業員の意識・価値観が多様化し、平均寿命も延びてきたことから、キャリア開発の重要性が声高に叫ばれている。このような現状にある今こそ、労務全般に精通している社会保険労務士がキャリア開発支援で活躍することは、大きな意味を持つのではないだろうか。
もちろん、その実施のためには労働者それぞれの実情に合わせた多様性のあるコンサルティング力が必須となってくることはいうまでもない。
また、コンサルティングの技術は一朝一夕で修得できるものではないが、種々のキャリア教育や実践の場に積極的にかかわっていくことを心掛け、少しでも早く高いコンサルティング力を身に着けたいところである。
キャリア開発支援は労働者個人を対象とした活動であるものの、労働者の成長を通して企業の発展に寄与し、ひいては広く社会に資するものである。それを鑑みると、キャリア開発を支援することは、まぎれもなく社会保険労務士の本来の役割であるといえるのではないだろうか。
社会保険労務士事務所 オフィス・ワイ 山本 厚【愛知】
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