【主張】雇用シェアの利用も推奨
雇用調整助成金から在籍出向型雇用維持(雇用シェア)への移行を――厚生労働省が今年2月にスタートさせた産業雇用安定助成金の利用が9月までの7カ月間で7382人と少ないが、休業補償が中心である雇調金利用より人材育成や産業発展に資することは明らかである(関連記事=雇用シェア 7カ月で7382人に 助成金の適用対象者 厚労省・届出状況まとめる)。今後は、行政などによる制度の周知活動を強化して、中小企業を中心とした利用促進につなげるべきである。
雇調金は、事業活動の縮小を余儀なくされた際、従業員の雇用維持を図るために、雇用調整(休業)や在籍出向を実施する事業主に対し休業手当などの一部を助成するもの。出向の場合、出向労働者の賃金に対する出向元の負担額の一部を支援している。
これに対して、産業雇用安定助成金は、労働者の雇用維持を目的として在籍型出向により労働者を送り出す事業主(出向元事業主)と労働者を受け入れる事業主(出向先事業主)の双方に支給する点に大きな違いがある。賃金支援以外にも、出向元事業主が出向に際して行う教育訓練費、さらに出向先事業主が出向者を受け入れるための機器や備品の整備などに要する経費を助成している。
在籍型出向の利点は、行政による経費支援に留まらない。今回、在籍型出向を実施した企業(出向元・出向先)と労働者が非常に高い評価をしている。出向元企業としては「労働意欲の維持・向上」「能力開発効果」、出向先企業は「自社従業員の業務負担軽減」「即戦力の確保」に役立ったとする声が多い。出向労働者も雇用維持はもちろんのこと、「能力開発・キャリアアップ」につながったという。
しかし、産業雇用安定助成金がスタートして7カ月を経た時点で、制度利用が活発とはいえない状況にある。出向元事業所数は700社弱、出向先事業所数は1100社程度である。一人ひとりのマッチング作業に丁寧で十分な時間が必要とはいえ、控えめな数値である。
雇調金と比較して、地域の産業発展に寄与する可能性が高いことも考えれば、周知活動を強化して利用拡大をめざすべきである。