「練習」と称し早出残業分を支払わず 労働時間記録の未保存、定期健康診断の未実施も さいたま労基署・送検
さいたま労働基準監督署は、労働者に割増賃金の一部を支払わなかったうえ、労働時間の記録を保存せず、定期健康診断も未実施だったとして、総合食品卸業者と同社代表取締役を労働基準法第37条(時間外労働に対する割増賃金)違反などの疑いでさいたま地検に書類送検した。「練習」と称して早出していた分の時間外割増賃金を支払っていなかった。
同社は労働者1人に対し、平成30年9~10月の割増賃金の一部である11万2449円を支払わなかった疑い。時間外労働分の割増賃金として17万9074円を支払わなければならなかったが、早出残業分を労働時間として計算していなかったため、6万6625円しか支払っていなかった。所定労働時間後に残って働いた時間外労働分の割増賃金は支払っていた。
同労働者は入社直後から、技量不足を理由とする「練習」のために早出残業を行っていた。練習は何年間も続いていたが、早出分の賃金は一度も支払っていなかったとみている。同社には従業員が30人ほど在籍していたが、練習していたのは同労働者だけだった。
同労働者の退職に当たり、労働時間の記録などの労働関係に関する重要な書類も破棄していた。本来は3年間保存しなければならなかったが、退職直後に破棄した疑いがある。さらに、同労働者および別の労働者1人について、1年以内ごとに1回の定期健康診断も実施していなかった疑い。
同労基署は、「何時に出勤したとしても、すべて所定の始業時間から業務を開始したとして一律で計算していた。労務管理が全般的にずさんで、捜査のなかで様ざまな違反が発覚した」と話している。
【令和3年8月16日送検】