企業の人権対応をサポート/つばさ社会保険労務士事務所 代表 植田 健一
企業による人権尊重の重要性について国際的な関心が高まっている。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」をきっかけに企業はサプライチェーン全体の人権リスクまで責任を負うことが求められるようになり、人権デューデリジェンスの導入が急速に進んでいる。またESG投資の拡大によって、企業の人権への取組みが格付けされ、企業価値に直接影響を及ぼすようになっている。企業はもはや経営戦略の一つとして人権尊重に取り組む時代になりつつある。
全国社会保険労務士会連合会(以下「連合会」)では2018年4月に「健全なグローバル化」と「持続的な社会の実現」に向けた活動を推進するため、国連グローバル・コンパクト(以下「UNGC」)に署名した。
社労士制度は、社労士法第1条において「労働及び社会保険に関する法律の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的としている。
連合会は、UNGCが提唱する普遍的原則を啓発しており、15年から労働CSRの研究を進めている。この研究を通して、社労士制度は、UNGCが提唱する項目のうち、とくに人権と労働において、その達成に貢献するものであると理解される。グローバル社会において、企業はますます国際労働基準に基づく人権の擁護と社会的課題への対応が求められるだろう。
社会保険労務士総合研究機構では「社労士による労働CSR推進プロジェクト」を設置し、各社労士が「労働CSR」とは何かという問いに答えることができ、さらには日々の活動にどのように取り組むべきかを示す「労働CSRガイドブック」を20年12月に作成した。今後、同ガイドブックを活用して、各社労士がクライアント企業などに労働CSRの導入について助言できるよう、研修の実施などの事業展開を計画している。
筆者も今年からプロジェクトメンバーとしてかかわっている。
「人権」は、堅苦しく難しい対応が求められる印象があるが、実は特別なことを求められるわけでもない。企業における人権対応とは、基本的に人を大切にすること、従業員や利害関係者の人としての尊厳を守ることである。ただし、それは理念だけでなく、いかなる状況下でも組織の中で機能し、守られるようなメカニズムを構築することが求められているのである。
そして、実際に企業がビジネス上の人権リスクに取り組む上で、最も身近で頼りになる存在になり得るのが社会保険労務士である。
つばさ社会保険労務士事務所 代表 植田 健一【大阪】
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