【ひのみやぐら】トップの決意を伝えるには
安全衛生管理はトップの決意が重要になる――。弊誌では何度となく、この言葉を繰り返してきた。歴代の全国安全週間のスローガンをみると「トップの決意」という言葉は実に5回も使われている。蛇足ではあるが「トップが率先」という言葉も使用されたことがあり、安全衛生にとっていかにトップが重要なのかがよく分かる。「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」では、第5条に「事業者は、安全衛生方針を表明し、労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させるものとする」と定めており、法的根拠が示されている。
「子は親の鏡」といったものだが、会社にとって従業員は子に位置するといえよう。親となるのは経営層であり、最上階にいるのは社長にほかならない。子は親の姿を見て、育っていく。経営層の意識レベルが、従業員に影響するのはいうまでもない。
意識は、職場風土によって浸透具合いが変わってくる。一般的に組織が大きくなればなるほど、伝わりづらくなるといっていいだろう。そのため、目に見える形で安全の重要性を訴える工夫が必要になる。
今号特集Ⅰで紹介している積水化学グループでは、社長はじめ各部門もトップが「私の安全行動宣言」を毎年表明し、イントラネットで公開している。注目したいのは、必ず手書きで宣言を書くという点だ。活字では、「気持ちが伝わらない」として、必ず直筆と指示している。専用用紙に記入してもらいPDFデータ化して社内で回覧するわけだが、手書きの文字のほうが、本人の想いが従業員に届くというわけだ。
自筆の文字は、声に似ているといってよい。発声の強弱や抑揚で、その人の体調や言葉に裏がないか読み取ることができる。文字も丁寧に力強く書くことで、意気込みが感じられる。決して上手である必要はない。上手く書こうとしている意図が汲み取れれば、誠実さはおのずと伝わる。
トップが決意を持ったところで、その想いが会社の隅々まで伝わらなくては意味がない。同社は、電流の通りやすい組織づくりの好事例といえる。