【主張】雇用仲介業の萎縮を懸念
厚生労働省は、有料職業紹介、労働者派遣、求人・求職情報提供など雇用仲介事業の適正化に向け規制強化策を検討している。現在の検討状況から推測すると、幅広い方面にわたる規制強化が実施される見通しである。しかし、適正化の裏で事業者の活動が委縮することのないよう十分な配慮を求めたい。
厚労省は、雇用仲介事業を社会的インフラと位置付け、求職者保護の観点から制度の見直しを図っていく方針を打ち出している。雇用仲介事業全体をカバーする共通ルールを法令で定め明確にするという。確かに現行制度において、規制の空白部分があるのは否定できない。とくに、求人者つまり人材を募集する企業に適用するルールや行政指導の権限の部分である。ここに焦点を当てて制度充実を図るのは必要なことだろう。
求人者への規制強化によって、近年増加が懸念されている求人票と実際の労働条件の相違に基づくトラブル防止の実効性が高まるからだ。ハローワークでも有料職業紹介でも、実際の労働条件とかけ離れた求人票が増加していくようなことになれば、各機関の社会的信頼性が維持できなくなる。求人・求職マッチングの前提が崩れてしまい、労働市場へのダメージは大きい。
厚労省案では、職業安定法改正により、求人者を対象とする適正化指針を作成するほか、指導・助言などが行えるようにする意向を明らかにしている。併せて、虚偽の労働条件を記載した求人票をハローワークや職業紹介事業者に提出した求人者に罰則を適用する案も浮上した。
懸念されるのは、一方で雇用仲介事業への幅広い規制強化が進む恐れである。たとえば、職業紹介責任者の選任において試験合格を要件としたり、紹介労働者が早期転職した場合のペナルティー創設、さらに求人・求職情報提供業における求職者からの苦情処理態勢の整備などである。
活性化させて盛り上げていかなければならない業界だけに制度化に当たっては慎重に判断してもらいたい。業界の声をよく聞き、できる限り小規模な強化に留めるべきではないだろうか。