働きがいづくりを重視/橋社会保険労務士事務所 橋 敏夫
平成元年6月にコネも実務経験もなく、社会保険労務士の知り合いもいないまま登録開業し、32年が経った。初めての業務が行きつけの散髪屋さんの年度更新で、いくらもらって良いかも分からずに、散髪代と差し引いて1000円が手元に残ったのを憶えている。これが私のスタートだった。
週48時間制を40時間制にしていこうという時短指導員を委嘱されたことがきっかけで、人前で話すことや、コンサルの仕方などを身に着けていった気がする。その頃の労使関係は今のような緊張したものではなく、古き良き時代感覚で労働関係法令は大雑把な運用だったと思う。所定労働時間を短くするだけの時短であり、時短した分時間外労働が増えても問題なし、助成金も出しますよ、という就業規則上だけの時短の時代で、社会保険労務士の知名度、地位も低かった。
経営には「継続的推進力」と「継続的維持力」の2つがある。「継続的推進力」とは「売ってこい、儲けてこい」のことで、「継続的維持力」とは「組織体制≒労務管理」のことで、ここを扱うのが社労士である。
国の働き方改革推進で社労士に対する期待度、重要性が30年前とは格段に上がった。社労士は経営者が継続的推進力に注力できるよう、信頼関係を構築しながら長期でお付き合いできる顧問契約の形式で後方支援させてもらうことが必要と考える。従業員の募集から退職後までの労務管理、研修、トラブル対応、助成金対応などに当たるが、その際に重要なのが法令遵守、経営者と働く人の心、利益性だ。この着眼点を確保しながら経営者に寄り添う心が大切である。
当事務所でも、人を雇い、賃金を決め、賞与で悩み、求人を出しても良い人が来ないと、零細企業の経営者として悩んでいる。この経験が経営者の悩みを心から理解し、寄り添うことを意味しているのだし、ここを肝に銘じて対応している。
経営者に寄り添うという着眼点のほかにもう一つ求められるのは、「働きがいづくり」だ。地域の中での一般的以上の賃金・休日・労働時間・福利厚生などの労務水準を維持し、上昇志向を持って働いてもらえるようにすることで「働きがい」の確保を行い、生産性の向上に資するようにしていくことが求められる。生産性向上が進めば労務水準を引き上げることができ、さらなる働きがいの向上となり、企業の成長になっていく。
このような継続的維持力の支援をすることで、経営者は経営に専念し、企業を発展させることができるだろうし、福井の活性化につながっていくと思う。
橋社会保険労務士事務所 橋 敏夫【福井】
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