高齢期の生活設計へ助言/小野田社労士・FPオフィス 小野田 理恵子
働き方の多様化が進むなか、雇用保険法の改正や副業・兼業の推進、それに伴う労災保険法の改正などにより、この数年で高齢者が長く働き続けるための環境整備がどんどん整いつつある。令和4年4月以降に順次施行される年金制度改正も、長期化する高齢期の経済基盤の充実を目的としており、高齢者就労への後押しを図るとともに、公的年金の受給方法の選択肢を広げていく。
この状況において個人にとって重要となるのは、制度内容やメリット・デメリットを理解したうえで、可能な選択肢を活用して、人生100年時代に備えて将来への不安材料を1つでも解消していくことである。
高齢期を目前にしてからこれらの対策に取り掛かるのでは遅きに失し、40~50歳代のうちから自分の人生を俯瞰し、この先の生き方、働き方、時間やお金の使い方等について考えておくことが必要な時代となる。
ところで私は、長く大手企業の従業員向けのライフプランセミナーに携わっているが、そのなかでいつも痛感することがある。それは、我われ社労士が普段かかわっている中小企業の従業員にこそ、高齢期の厳しい現状を認識し、少しでも早くから正しい知識に基づく対策を打って将来に備えていただきたいということである。
ところが多くの中小企業では、従業員に自身のライフプランについて考えさせるために時間や経費を割くことは難しく、もともとの企業間格差が情報格差につながり、セカンドライフへの準備にも差が生じてしまっていると感じる。そこで私は、社労士が中小企業での情報提供の役割を果たせないものかと常々考え、この7~8年、少しずつ実践件数を増やしているところである。
折しも令和3年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業の70歳までの就業機会確保が努力義務化された。今のところは努力義務ではあるが、この先は義務化の方向に進んでいくものと考えられるため、いずれの企業も早めに5つの選択肢の中から自社に合った対応方法を検討する必要がある。シニアの労働力の活用が不可欠な企業にとってはなおさらである。
場合によっては各従業員のライフプランや年金事情への配慮も必要になろう。その具体的な検討段階においては、企業の制度や従業員の働き方の実態が分かる社労士だからこそ、会社と従業員の双方に対して有効な情報提供やアドバイスができるのではないだろうか。私はここにも社労士の果たせる役割があると考えている。
小野田社労士・FPオフィス 小野田 理恵子【愛知】
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