【主張】「特定技能」は慎重運用を
一般紙報道によると、法務省の出入国管理庁は、外国人の在留資格「特定技能」の全ての対象産業について永住や家族帯同が可能となる形での制度見直しを進めるという。熟練労働者である特定技能2号の対象分野を、特定技能1号の産業分野に広げるという意味と思われるが、制度導入時に問題視された移民政策の入口とならないよう運用には慎重を期してもらいたい。
特定技能制度は、2018年12月の臨時国会における入管法改正により新設し、19年4月1日より受入れを開始。人手不足が深刻な介護、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業など全14産業が対象である。
ただし、全14産業分野を対象としているのは特定技能1号で、熟練技能を要する特定技能2号は現在のところ建設と造船・舶用工業に限られている。今回は、特定技能2号の対象分野にその他の産業を追加する方向とみられる。
在留資格期間は、特定技能1号が通算5年、特定技能2号は通算上限はない。特定技能2号では、配偶者や子供などの家族帯同が可能となる。
制度見直しにより、特定技能1号の外国人に永住や家族帯同を認めるのは、事実上移民政策となり得るが、特定技能2号の対象分野を拡大して永住と家族帯同を認めるだけならバランスは採れている。
特定技能での受入れ外国人数は、約3万8000人に達しているが、すべて特定技能1号であり、現時点で特定技能2号の受入れ実績はない。永住や家族帯同を認めるのが、産業発展に貢献できる特定技能2号に限るのなら、日本社会に大きなダメージは生じないはずだ。
しかし、将来的に特定技能2号の大幅受入れ拡大を企図しているとすれば話は違う。制度導入時に各方面から懸念されていた移民政策の入口となりかねず、次世代社会への影響は深刻となろう。
人手不足だからといって、安易・性急に特定技能2号の受入れを増加させるのは誤りと指摘したい。日本産業に有益な真の熟練労働者のみに絞り、慎重な運用をすべきだ。