【主張】投資環境改善が最大の鍵
2021年も終わろうとしている。消費税増税に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大で、未だに日本経済・社会が浮揚する気配がない。成立が見込まれる大規模補正予算とその後の政策運営に左右されるといえるが、本紙としては労働生産性向上対策を重視すべきと訴えたい。政府は「人的資本の抜本強化」を通じて、好循環を強化すべきとしているが、掛け声だけでは始まらない。企業がデジタル化をはじめとする設備投資を最大化できる経済環境の形成が何より重要と主張したい。
日本産業における付加価値生産の状況をみると、1990年代以降は、活況だった70年代、80年代と比較して機械設備の革新や買い替えなど技術的進歩が低調だったことが響いた。この間、アメリカや中国などでは、デジタル分野での技術開発が急伸し、大きく水を空けられてしまった。
結果として、労働生産性は世界主要国中で最低水準となり、賃金・所得はほぼ30年前と同水準、国力は衰退していくばかりで世界的地位の低下が止まらない。GDPは世界3位をかろうじてキープしているが、1人当たりでは20位台でしかない。現状の困窮状態を次世代に引き継ぐことはできない。
労働生産性を向上させるには、Off-JTなど個々の労働者の能力開発だけでは限界がある。まして、政府が指摘するエンゲージメントの向上、成長分野への労働移動、理工系女性の採用拡大などで解決するなら、すでに何らかの効果が出ていても不思議ではない。
カギとなるのは、政府による設備投資環境の形成である。企業が、デジタル投資などを積極化し、将来的な成長・発展を見込める状況を作り出すことが大切である。成長が望めない暗い経済環境が長期間にわたっている現状で、果たして70年代のような果敢な設備投資を実行しようとする意欲が醸成されるか疑問というほかない。
政府が進めようとしている経済対策には、不満や注文が多く不十分な点が少なくないが、労働生産性向上を図るには、最早、政府に頼らざるを得ないところまできている。