【主張】雇保保険料引上げを憂慮
厚生労働省は、財政運営上懸念が生じているとして、雇用保険料率の引上げを検討していたが、失業等給付の料率については今秋まで現行のまま据え置くことを決めた。しかし、新型コロナウイルス感染症の経済への悪影響がいつまで続くか分からない状況を考えれば、今から秋の保険料率引上げを決定することはできない。
変異が続いているコロナウイルス感染症が、今後どのように再拡大するか不明というほかない。感染力が強いオミクロン株も広がってきている。感染力が強まると、毒性が弱まるというのが一般的見方だが、企業や勤労者の気持ちとしては、不安が続くことになろう。
厚労省の方針では、4月から失業等給付に関する保険料率(現行0.2%)の引き上げに向けた検討に入ったが、与党から異論が表明されたため、参院選前の引上げを断念したと報道されている。参院選の支持率のために、保険料率引上げを10月(予定0.6%)に後ろ倒ししたならとても容認できない。
厚労省内での検討過程では、保険料率の据え置きを求める審議会委員の意見が主流となっていた。「最低賃金引上げもあり、中小企業は苦しい状況となっている。将来的にも保険料が上がることがないようにすべき」「雇用調整助成金の支給が滞らないよう速やかに国費を措置すべき。保険料は、コロナ禍の厳しい経済情勢や最賃の大幅な引上げを踏まえ、引き上がることがないよう強く求める」「二事業で赤字になった部分は全額一般財源が必要」などである。
たしかに、5兆円を超える雇調金などの支給により、雇用保険財政は窮地に陥っているが、コロナウイルス感染拡大の不安が払拭し得ない現状において、今から参院選後の保険料率引上げを決定することはできない。感染症拡大の懸念に、法定費用の増額見通しが加われば、多くの中小企業において先行き不安が増し、経済全体に悪影響を及ぼすだろう。
緊急事態が続く間は、国が多くを負担する姿勢を強くアピールし、民間企業に安心感を醸成する必要がある。