【主張】次代の労働規制へ議論を

2022.02.03 【主張】
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 1916年施行の工場法を源流とする労働基準法の根本的見直しを――経済同友会(櫻田謙悟代表幹事)が明らかにした2022年年頭見解と第18回企業白書の一節である(=関連記事)。昨年10月末に経団連が政府の規制改革推進会議に提出した提言では、労働法制の選択制を提言していた(=関連記事)。いずれも労働時間の長短を基準とする労働基準法制のあり方に疑問を呈している。わが国の労働生産性向上のためにも、古色蒼然とした規制を総体的に改めるための議論を急いで開始すべきである。

 現行労基法制定の基盤となっているのは、明治期に成立した工場法である。工場法は、「女工哀史」と称された製糸・紡績業や炭坑・土木工事における「たこ部屋」などに象徴される過酷労働に対処するものだった。産業の健全な発達と国防の観点から労働者保護の必要性が高まった。

 基本的考え方は、現行労基法に引き継がれている。最長労働時間の法定、一定の休日・休憩の義務化、工場の安全・衛生確保のための行政による臨検・命令権の創設などで、こうした労働者保護規制とその運用経験の集大成が現行労基法である。

 しかし、時代は大きく動いている。明治期のような過酷労働は例外となり、労働時間の長短は、最早、規制の一要素にしか過ぎなくなった。人の働き方やその評価は、労働時間の長短のみで測れなくなったのは明らかである。多くの先進的な仕事による結果や成果は、労働時間に比例せずかえって短時間で効率的に仕事をこなせる働き手が優秀な人材とされる。

 労働法制の選択制も一つのアイデアである。デジタル時代に見合った、より柔軟で多様な働き方を前提とする法体系へと転換する必要が生じていよう。産業の革新的な改革・発想を担う頭脳労働に適した労働基準が必要である。国レベルで早期に議論を開始し、見直しに向けた枠組みを打ち出すべきだろう。

 わが国は、労働生産性で多くの主要国に後れを取っている。次代を担うデジタル分野でも後塵を拝しているのが実情だ。新しい発想の労働基準による飛躍が必要である。

令和4年2月7日第3339号2面 掲載
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