【主張】デジタル都市国家に期待
2022年通常国会の冒頭で、施政方針演説を行った岸田文雄総理大臣は、成長戦略の第一の柱として、「デジタル田園都市国家構想」を打ち出した。政策推進の基盤となるデジタル人材については、26年度までに230万人を育成・確保する予定である。デジタル競争力で世界30位程度に落ち込んでいる日本を再生させるための国家プロジェクトといえ、官民が一体となった積極的な取組みを求めたい。
20年に総務省が発表した「情報通信白書」によると、デジタル競争力に影響を与える要因を「知識」「技術」「将来への備え」の3つに分類して算出した世界ランキングで、日本は前年に比べて4位下がり、27位だった。アメリカ、シンガポール、デンマーク、スウェーデン、香港が上位5カ国である。
日本経済あるいは労働生産性が低迷している大きな要因にデジタル化の遅れがあることは明らかである。岸田総理がアピールする同「構想」が、現実化すれば日本経済・社会を一歩前進させるかもしれない。21年度補正予算と22年度当初予算で投入する予算は6兆円に迫っており、以降も継続的・計画的な予算投入を惜しまないでもらいたい。
政策実現のカギとなるのはやはりデジタル人材の確保・育成であろう。上述の白書では、デジタルに関する知識を有する人材力の順位が近年とくに低下傾向にあり、20年の日本の順位は46位に留まった。まず解決しなければならないのは、デジタル人材の育成・確保にあることは論を待たない。
同「構想」では、地域で活躍できるデジタル人材を、22年度末までに年間25万人、24年度末までに年間45万人育成できる体制を段階的に形成し、26年度までには230万人の育成・確保をめざす方針である。
厚生労働省、経済産業省、金融庁などが一体となり、プロフェッショナル人材や地域企業経営者のマッチング事業などを推進する。26年度までに、日本の地方・地域がどこまでデジタル化し発展を遂げているか、期待をもって見守りたい。