【主張】3%賃上げ困難との見方
経団連と連合はこのほど東京都内で懇談し、2022年の春季労使交渉がスタートした。岸田文雄総理は、「成長と分配の好循環」を実現するため、3%程度の賃上げが必要としているが、そう甘くない。現実には、2%台に乗るか否かというのが大勢の見方で、とても国民の消費拡大を促せる賃上げ水準とはいえない。政府は、消費拡大と経済成長に向けた次の手を考えないと、好循環は画餅に帰す恐れが高い。
岸田総理は、労使の双方代表に対し「新しい資本主義」を実現するため、「3%を超える賃上げを期待する」と要請した。コロナ禍において「K字型」景況が明確となり、業績が回復した大手企業においては、達成可能な賃上げ水準かもしれない。
一般報道によると、明治安田生命保険は、営業職員の給与制度を見直し、平均5%引き上げるという。大和証券グループは、グループ社員約1万3000人の基本給を一律に引き上げるベアと一時金を組み合わせ、3%以上の引上げを実施する方向という。
しかし、現実には全体平均賃上げ率は2%前後で終局する見通しが有力である。主な民間シンクタンクの賃上げ率予想を挙げると、日本総合研究所は2年振りに2%台に乗る可能性があるとしたものの、第一生命保険研究所は1.98%に留まるとした。本紙が賃金解説をお願いしているコンサルタントは、「2.1%前後」との見方がある一方で、「1.8%未満もあり得る」との消極的な予想も(=関連記事)。
22年の消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通しは1%程度で、アメリカなどとは異なって、引き続きデフレ状態から十分脱し切れていないのが実態である。そのなかで3%超の賃上げ率は、ほぼ現実離れした掛け声に留まる可能性が高いだろう。
安倍政権以降、7年間にわたって2%台の賃上げ率が続いたが、国民の消費拡大にはつながらなかった。22年の賃上げ率が、各予想機関の見通しどおり、実際に2%前後に抑えられてしまえば、好循環の達成はおぼつかない。政府は、別の経済対策を打ち出す必要があろう。