【ひのみやぐら】「怒り」のマネジメントを
もうすぐ新入社員の入社の季節。新入社員研修で労働災害防止の基本として教育しておきたいのが「報・連・相(ほうれんそう)」だ。読者諸兄にはいわずもがなだが、報は報告、連は連絡、相は相談を指す。点検や確認で不具合が見つかったとき、作業方法の変更があったときなど報連相を行っていなかったことで労働災害が起きてしまうことが少なくない。
報連相は労働災害防止には欠かせないコミュニケーションだが、近年は管理監督者やベテラン安全マンから「うまくいっていない」とのため息が漏れることもあるという(2021年10月15日号「想いはせれば」参照)。IT技術の進歩でメールでの連絡が増えたり、職場には私生活を持ち込まないなど人間関係が希薄になる風潮も要因としてあるだろう。
一方、SNSで共感の声が広がっているのが「お・ひ・た・し」だ。おひたしは、「お」は怒らない、「ひ」は否定しない、「た」は助ける、「し」は指示する、といった具合い。部下がしてきた報連相にはおひたしで返すのが、上司の上手な対応方法という。
特に「怒らない」「否定しない」の2項目は、若い世代とコミュニケーションを図るうえで、重要なポイントといえる。少子化で両親に真綿に包まれるようにして育てられた世代は、怒られることに慣れていない。怒鳴られることが当たり前としていた世代からすれば、「甘い」と感じるだろうが、今の時代、上司に寄り添う姿勢がなければ、部下も聞く耳を持たないだろう。結果的にコミュニケーションは成立していないといってよい。
怒らないための手法としては「アンガーマネジメント」がある。怒りのピークを超す6秒を待つというものだ。もう一つ付け加えるならば「~はずだ」と自分の持つ固定観念にとらわれないことが大切といえよう。自分の考えとは違ったり、裏切られたときに人は怒りを感じる。上司であれば大きな視野を持って、異なる意見にも耳を傾けるのが人の度量というものだろう。
報連相にはおひたしで対応する。上司と部下の意思疎通があってこそ、労働災害を防ぐことができる。