労使の共存共栄を支える/村澤社会保険労務士法人 村澤 詩子
社労士になったきっかけは、義兄の「おまえは、おせっかいだから人のためになる仕事が向いている。『社会保険労務士』を考えたらどうだ」という一言だった。この言葉がなければ、今の私はなかった。
私は大学卒業後、千代田区の某労務管理事務所にお世話になった。外資系の大手企業を担当することになり、人事労務の基礎、入退社業務、労災・通災などいわゆる第1号業務をイチから学んだ。分からないことはすべて行政に確認をし、指摘された間違いを修正する日々を送りながら、少しずつ色々な手続きがスムーズに行えるようになっていった。
相談業務で核になるのは、就業規則の作成である。就業規則は会社のルールブックであり、労使はこれを通じて会社の理念、信条、約束事を知ることができる。
従業員が自分の会社がどんな会社であるかを判断するための材料でもあるが、会社と従業員双方が良い関係を築ける内容でなければ、就業規則はただちに形骸化し、意味を持たないただの冊子になってしまう。双方が納得できるルール作りと運用は、会社の業績を左右する重要業務であり、この第3号業務こそが、社労士として一番やりがいを感じる業務である。
会社で起こる問題の多くは、コミュニケーション不足や見解の相違、確認不足、古い就業規則による記載間違いなどであり、これらを疎かにすると労働問題が発生する。通常、火種は以前から存在し、感情的または意図的に起こされるものである。
年次有給休暇を例に挙げると、ある会社は正社員に一律年間10日を付与しているため問題ないという。一方、従業員は在籍期間によって付与される日数が異なることも、パート従業員でも年休が発生することも知っているが、「指摘しない、したくない」と考える。権利を主張すれば会社に居づらくなるかもしれないからだ。その時点で自分の会社に不信感を持つようになる。こういった積み重ねは、会社が従業員のために、という思いと従業員の会社への評価のギャップにつながっていく。あっせんや訴訟など、増加傾向にある労働問題の原因の1つと考える。
働き方改革、多様な働き方が豊かな生き方とされる一方で、会社はどこまでをどのように受け入れるのかなど、労務の相談はより複雑で細かい事象にまで及んでいる。労使双方において、「共存共栄」が図れる会社を労務面から支えるプロとして、会社から大切なパートナーと思っていただける社労士をめざしていきたい。
村澤社会保険労務士法人 村澤 詩子【東京】
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